吉沢亮と現実の男をガチで比べてしまう女

地獄を共にしている友人がいる。
彼女の名をHとしておく。

Hは人生の生き辛さを共有できる数少ない友人だ。
しかしながら生活スタイルや来歴には大きな違いがある。
では、なぜ地獄を共有できるかというと、もちろん、職業や趣味などの相違点を上回るほどの共通点があるからだ。

例えば、私達は基本的に人が嫌いだ。
厄介なのが、この嫌いというのが「心から嫌悪している」と言うより、「人と上手く関わっていく努力が面倒」なのだ。私達は健常者より、人と関わることにエネルギーを使ってしまう。だから人が嫌いだ。人という生き物はむしろ好きなはずなのに。厄介。実に厄介。

次に、プライドが高い。
自己肯定感が低いくせにプライドが高いので、面倒を極めている。
人にマウントを取られるのが嫌いで、それを回避するための努力工夫はするくせに、自己肯定感が低いのでそんな自分を卑しく思うし、努力によって得た能力に満足できない。
そんな人間がどう考えるようになるかというと、
「こんなグズでゴミな私にさえできることがなぜ出来ないのか」
と周りに必要以上の低評価を下すようになる。
書いていて自分でも改めて思うのだけれど、クズである。
自覚しているならひねくれた考え方はやめて欲しいものだ。


やめて欲しいものだ、等と他人行儀な書き方をしてしまったが、この当たりも私たちの共通点だ。
自分たちの価値観の問題点、世間から外れた部分をしっかり自覚している。自覚しているけれど、自覚している自分と、自分の人生を取り仕切っている自分が何故か剥離したような感覚で、課題点を改善することが出来ない。
分析能力、自覚力に長けているものの、素直じゃないのでそれを取り込み消化していけない。


このように、問題だらけで甘ったれた社会不適合者な私たちだけれど、最近新たに共通点があることが発覚した。

私達は、
吉沢亮と現実の男をガチで較べてしまう」
のだ。

社会で生きる大抵の女性は、自身の身の回りの男性を身の丈にあった物差しでジャッジして交際をするものなのだ。

例えば自分に好意を寄せてくれているいい感じの男性がいたとする。
顔もスタイルも最高のイケメンではないが垢抜けている。話も合うし面白い。
そんな男性がいたとして、世の中の大抵の女性はそこからスムーズに恋愛関係に発展させることが出来る(らしい)
しかしながら私たちは、ある程度男性と距離が縮まった段階で思うのだ。

──あ、この人吉沢亮よりかっこよくないな。


当たり前だ!!!!!!!!!
当たり前。至極当たり前。なんせあの吉沢亮吉沢亮と比べているのだ。15cm物差しでダニの身長を測ろうとするくらいめちゃくちゃな物差し。所謂不可能。
しかし私たちは本気でそれをしてしまう。
ダニにものさしを当てて、「なんだちっちぇーな」と萎えてしまう。
いい感じの男性をダニになど例えて大変申し訳ないのだが、私達は吉沢亮を自分の恋人となる人の物差しとしているので、感覚としてはそのようなものなのだ。
自分たちもダニなのに、ダニを測るのに一丁前に定規を持ち出すのだ。


ある時彼女、Hの物差しは推しである某ジャニーズアイドルになるし、私の物差しはイケメン声優になったりする。

とにかく、私達は自分たちに不釣り合いなものさしを持ち出して、勝手に萎える。
だから私達は極端に男性経験が少ない。
男性経験というか、まあそもそも人間経験が疎かで苦手であるので当たり前だけれど、自分の身の回りの男性を恋愛対象と出来ないのだ。


ごちゃごちゃ言うけど要は理想が高いんでしょ。

まあ、その通りです。
そして再三言うが、これは恐らく男性にだけではなく、人間全般に対して理想が高い。
ので友人も極端に少ない。
ただし我々のような異質な人間は、根暗さをネタにすると同性に好かれる節がある(恐れ多いが例にあげると、オードリー若林や南海キャンディーズ山里のような芸風で一般社会を生きているような感じ)
ので、限られた友人の質はピカイチだという自負もある。
そしてその友人の中でも地獄を共有できるのが、何よりもこの、Hなのである。



Hと「地獄オフ会」と称して2人で早朝のコメダに集合し、世の中はくそだ、と宣う。
Hは言う。

「周りの人は皆、人生辛いと言いつつなんだかんだ楽しそうに生きてる。私の言う人生辛いは、アンタの言うそれなんだよなぁ」

私は笑った。
笑って、また2人で下世話な話と「おっさんのメガネは脂ぎってて臭い」等の話でまた笑って、笑って、とにかく笑って、ふと2人してコーヒーに視線を落として、息をするように呟く。

「あ~あ、早く何もかもめちゃくちゃになんねえかなあ」

あまりに切実なHの呟き。
むしろ呟きと言うより呼吸のように自然に溢れ出てきたその言葉に、私はまた、笑ってしまった。
笑いながら少し泣いた。




何を隠そう、そんな生き辛い生き物がいるよ、というだけの話でした。
恐らく世の中には「自分は不適合者であるというマイノリティを感じているマジョリティ」が居て、自分もその一端であって、私の生き辛さなんて平凡なものなんだろうとも思う。けど、地獄は確かに存在していて、今、ナウ、現状、この瞬間に私を苦しめている地獄から逃避するには、やっぱり私たちは、目の前の男性なんかに救われることは出来なくて、吉沢亮を求めてしまう。



(ps)現状1番結婚したいのはDJ松永さんです。求婚、待ってます。